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『After Devil Force~狂王の後継者~』は1998年8月にWindows95&98対応のゲームとしてコンパイルより発売された、戦術シミュレーションゲームです。本ブログはその原作者による小説版となっております。

 グクツの王都ルスの城下町はその国の規模に比すれば栄えていると評せるだろう。

 

 この国は規模こそ小体ではあるが豊かな農産物に恵まれ、特に茶葉の生産ではフォーリス全土に銘品として知られる者を輸出しているほどだ。

 城こそ王城があるのみで都城までは築かれてはおらず、市街は平地に無造作に広がっている。だが、その王城の門前からの大道には日に二度の市が開かれ賑わい、この街の繁華を裏付けている。


 今日も朝市は街内外の人々で賑わい、立ち並んだ露店には農産物、水産物、工芸品など、昨日の仕事の成果と今日の仕事の始まりを表しているかのようだ。

 

 一見、常に変わらぬ門前市の風景のように見えるが、ここ数日は少し常とは違った客層が集まるようになっている。

 

 明らかにルスの市民、いやグクツの民たちとは風体も民族も違った、薄汚れた屈強な男たちが多く市に姿を現すようになっていた。市民たちは、そんな男たちを胡乱げに見ており、事実、市街の治安や雰囲気は確実に悪くなっている。


 この日に日に増えていくこのお世辞にも風体のよいとは言えない異邦人たちは、フォーリス全土から集まってきた傭兵たちである。彼らが喜ぶのは主に立ち食いできるような手軽な食事、武具や補修のための道具や材料、女が喜びそうなちょっとした小物や装飾品、そしてなによりも酒であった。

 そんな市民たちの感情とは別に、露店商たちは徐々に金遣いの荒いこの者たちを目当ての品を並べるようになっているのも確かであった。なにしろ、それを諦めて受け入れなければならない事情がルスというよりもグクツにはあった。

  今、グクツは戦禍の只中にある。

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 大陸、と呼ばれるこの惑星の中央を占める巨大大陸の西端に、“フォーリス”と呼ばれる地方がある。

 近年、この地方が統一され新王朝が建った。

 ここ20年の話である。

 

『After Devil Force』

 星が多く月がない。

 月明かりのない夜は辛うじて生き残った彼らを守ってくれてはいるが、それは翌朝の死を約束するものに過ぎなかった。

 ラウル・クォーダ侯領の南端に位置するベルツ城。

 ここに立て篭もるわずか五百人ほどの兵士は新月の夜にたった一晩の休息を与えられている。

「やあ、ずいぶんと隙なく囲んでくれたものだ」

 元ラウル軍総参軍長エスク・ガノブレードは、望楼に立って自軍の最期の拠り所となった地を取り囲む篝火を見渡しながら、そんな感嘆の声を漏らした。

 それは、壮観な光景であった。

 まるで満天の星空がそのまま暗闇の地上の中に広がるように、彼らを取り囲むラウル軍二十万が焚く万余を数える篝火がベルツ城を取り囲んでいるのだ。その陣容に隙はなく乱れもない。敵ながらこれに感嘆の声を挙げないほど、元ラウル軍総参軍長は余裕のない人物ではなかった。

(自分が初めてこの光景を目にしたのも、この辺りだったなぁ)

 今日ばかりは多少の感傷も許されるだろう。エスクはこれまでの生涯において幾度ともなく目にしたそんな光景に、そんな感慨を持った。

(あのときは、これよりももっと少なかった筈だが。今よりもずっと大きく近く見えたものだ。正直、怖くてたまらなかったな……)

 夜を徹して、クォーダ、ラウル、コーネル、コルア、ユファなど、大陸西方のフォーリスと呼ばれる亜大陸における各国のそれぞれの民族、国家の特色に合わせた軍鼓や軍鐘、鬨声、軍歌などが響き渡るのは、威圧のためである。

 実際、四面より響き渡るこれらの音声はフォーリス全土を敵としている事を如実に表現しており、かつてはこういった音響に戦意を亡くした者たちもあった。

 しかし、望楼の上から城内を見渡せば、その鬨に聞こえてくる音にあわせて詠いながら踊る者はいても、恐れる風情を見せる者たちはいない。

 というよりも、彼らは自分たちの命の最期の宴に忙しく、恐れて震えるような無駄をするつもりはまったくなかったに違いない。

「まったく、こんな馬鹿どもが、これほど残るとはなぁ……」

 エスクは、そんな彼らを見ながら一番の馬鹿は自分か、もう一人望楼の上にある人物であるに違いないと思った。

「よう、旨い酒を飲んでいるようだな」

「ああ、今までで一番旨い酒だ」

 エスクの目の前にあるのは、かつてフォーリス全土において「武勲」の代名詞とまで称された人物であった。

 名をリューダスという。

 無造作に伸びた髪が、かつて金色をしていた事など誰が信じられるだろう。すっかり白褪せた髪は、この人物がもっとも大事なものを失う以前の姿を知るエスクにとっては無闇に伸びた髭とともに痛々しく感じられるものの一つとなってる。

 それも貫禄とも取られる年齢にお互いなってはいたが、やはり酒で濁った青い瞳と笑いこそ浮かべてはいるが、力の感じられない表情はエスクにとっては見ていて辛いものがあった。

 今でもエスクにとっては、リューダスという名前には国内で轟くその武勲や地位などでなく、明るく快活な、時に少年じみた姿が思い浮かぶのだ。

 それだけに、今の姿はエスク自身も責任がないとは言えないだけに、未だに心に痛みが伴うのである。



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